松は、一年中緑の葉を保ち、幹の荒れた肌や力強い枝ぶりを楽しむ樹です。盆栽で「松」と言うとき、多くは黒松か五葉松を指します。どちらも丈夫ですが、葉の性質と芽の手入れの方法がはっきり違います。

ここでは二つの違いを比べたうえで、共通する管理と、松の盆栽で欠かせない芽の手入れ・針金かけの基本を説明します。黒松・五葉松それぞれの詳しい育て方は、記事の途中で案内する個別のページにまとめています。

黒松と五葉松の違い

いちばん簡単な見分け方は、葉の付け根を見ることです。黒松は2本の葉が1組になって生え、五葉松は5本が1組になっています。

黒松と五葉松の見分け方。黒松は葉が2本で1組で太く硬く長め、日なたと水を好み芽切りで葉を短くする。五葉松は葉が5本で1組で短く柔らかく白っぽく、水はやや控えめにし芽切りはしない
図:葉の付け根を見ると、2本1組か5本1組かで見分けられます

黒松 五葉松
葉 2本で1組。太く硬く、長め 5本で1組。短く柔らかく、白っぽい筋が入る
姿の印象 幹肌が荒れて力強い 葉が密に茂り、穏やかで品のある姿
水 よく吸う。乾いたらたっぷり 過湿を嫌う。乾いてから与える
芽の手入れ 春のみどり摘みと、初夏の芽切り 春のみどり摘みが中心。芽切りはしない
向く人 毎日水やりができ、日当たりのよい場所がある人 水のやりすぎに気をつけられる人

迷ったら、置き場所で決めるのがおすすめです。一日中よく日が当たり、夏も水やりを欠かさずできるなら黒松、日当たりはよいものの水を控えめに管理したいなら五葉松が合います。

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共通する置き場所・水やり・肥料

松はどちらも日光を好みます。一年を通して日当たりと風通しのよい屋外の棚に置きます。黒松は夏も日なたで育てるのが基本です。五葉松は、夏は午後の強い日差しを避け、風通しを優先します(午前は日なた)。日が足りないと葉が長く伸びて間延びし、内側の枝が枯れていきます。冬も屋外で管理し、小さな鉢だけ寒風と凍結を避けます。

水やりは、土の表面が乾いたら鉢底から流れ出るまで与えます。黒松は乾いたらすぐ、五葉松は乾いたのをしっかり確かめてから、と考えると違いをつけやすくなります。

肥料は、4月から梅雨前までと、9月から10月に、ゆっくり効く固形の肥料を置きます。真夏と冬は与えません。

芽の手入れ:みどり摘み・芽切り・古葉取り

みどり摘み(4〜5月)

春に枝先から伸びるろうそくのような新芽を「みどり」と呼びます。伸ばしたままにすると枝が長くなり、樹形が崩れます。みどりが伸びきって葉が開く前に、強く伸びたものを指で折り取るか、半分ほどの長さに摘みます。

芽切り(6月中旬〜7月上旬、黒松だけ)

黒松は、春に伸びた新芽を付け根から切ると、そのあとに短い二番芽が出て、葉の長さがそろいます。これを芽切りと言います。樹に体力が必要な作業なので、元気な樹だけに行い、植え替えた年や弱っている樹には行いません。五葉松は二番芽が出にくいため、芽切りはしません。

古葉取り(10〜12月)

秋になると、2〜3年前の古い葉が黄色くなって落ちていきます。古い葉や、込み合った部分の葉を指で抜いて整理すると、内側まで日が当たり、芽が育ちやすくなります。

芽切りを遅い時期に行うと、二番芽が十分に育たないまま冬を迎えます。関東の平地なら7月上旬までに済ませ、寒い地域では早めに行ってください。

針金かけの基本

針金かけは、枝に針金を巻いて曲げ、樹の形をつくる作業です。松は、樹液の動きが落ち着く10月下旬から2月ごろが適期です。春に芽が動き出してからは、枝が太りやすく傷みやすいので避けます。

針金のかけ方の基本。枝に沿わせて約45度で巻き、太さは枝の3分の1程度。間隔が粗いと枝を支えられず形が戻る。枝が太ると食い込んで跡が残るので、食い込む前に外す
図:約45度で、枝に沿わせて巻きます

  1. 針金を選ぶ:はじめは柔らかく扱いやすいアルミ線が使いやすいです。太さは、曲げたい枝の3分の1ほどが目安です。
  2. 起点を決める:幹や太い枝に先に何周か巻いて固定し、そこから曲げたい枝へ巻き進めます。
  3. 巻く:枝に沿わせ、約45度の角度で同じ間隔に巻きます。葉を巻き込まないように、葉をよけながら進めます。
  4. 曲げる:巻き終わったら、枝の外側を指で支えながら、少しずつ曲げます。一度に大きく曲げると折れます。
  5. 外す:枝が太って針金が食い込みそうになったら外します。外すときは、巻き戻すより、針金切りで細かく切って外すほうが枝を傷めません。

ポイント

針金をかけた枝は、早いものでは数か月で形が決まります。月に一度は食い込んでいないかを確かめ、跡がつき始めたら早めに外してください。針金かけ全体の考え方は剪定・芽摘み・針金かけの入門でも説明しています。

一年の作業カレンダー

関東の平地を想定した目安です。

松の盆栽の年間作業カレンダー。植え替えは3月〜4月上旬、みどり摘みは4月中旬〜5月で五葉松・黒松とも、芽切りは6月中旬〜7月上旬で黒松だけ、肥料は4月〜梅雨前と9〜10月、古葉取りは10月中旬〜12月、針金かけは10月下旬〜2月
図:松の一年の作業(関東の平地の目安)

植え替えは、芽が動き出す3月から4月上旬に、2〜4年に1回が目安です。松の根には、根の働きを助ける菌がついていることが多いので、古い土をすべて落とさず、一部を残して植え替えます。

展示台に置かれた、長く仕立てられた黒松の盆栽
写真:Starr Environmental / CC BY 2.0

葉の色が変わったときは

松の葉は、秋に古い葉が黄色くなって落ちるのが自然な姿です。内側の古い葉だけが黄色くなっているなら、心配はいりません。気をつけたいのは、次のような変化です。

  • 枝先の新しい葉まで黄色や茶色になる:根が傷んでいる可能性があります。水のやりすぎで土が乾く間がない、または根が鉢に詰まって水が通らないことが多い原因です。
  • 葉が全体に長く伸び、色が薄い:日照不足です。もっと日の当たる場所に移します。
  • 葉の付け根に白い綿のようなものがつく:カイガラムシの仲間です。歯ブラシなどでこすり落とします。
  • 葉が赤茶色の点で汚れ、落ちる:葉の病気が考えられます。落ちた葉は鉢の上や周りから取り除き、風通しをよくします。

季節の目安

五葉松は夏の高温と蒸れが苦手で、梅雨から夏に葉色が悪くなりやすい樹です。この時期は水を控えめにし、風がよく通る場所に置いてください。

黒松・五葉松の詳しい育て方

ここで紹介した違いを踏まえて、それぞれの樹の水やりや剪定の細かな点は、個別のページで説明しています。黒松は、こちらです。

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五葉松は、こちらにまとめています。

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一年中緑を楽しめるほかの樹種とも比べたいときは常緑の盆栽の選び方を、松の盆栽を探すときは黒松の盆栽一覧や五葉松の盆栽一覧をご覧ください。