赤松は、日本の山野に広く自生する松です。黒松の力強さに対して、細く柔らかな葉と赤みを帯びた幹肌がやさしい印象を与え、昔から「女松(めまつ)」とも呼ばれてきました。
育て方の基本は黒松と共通していますが、樹の勢いがやや穏やかで、樹皮も薄く傷つきやすいという違いがあります。その違いを踏まえて、作業を少し控えめにするのがポイントです。
赤松と黒松の見分け方
並べてみると、葉の太さと冬芽の色ではっきり見分けられます。
図:冬芽の色は、赤松が赤褐色、黒松が白っぽい色です
| 見るところ | 赤松 | 黒松 |
|---|---|---|
| 葉 | 細く柔らかい。触っても痛くない | 太く硬い。先が鋭い |
| 冬芽 | 赤褐色 | 白っぽい |
| 幹肌 | 赤みがあり、薄くはがれる | 黒っぽく、厚く亀甲状に割れる |
| 樹の勢い | やや穏やか | 強い |
| 作業の強さ | 芽切りや根の整理は控えめに | 芽切りで葉を短くそろえやすい |
黒松の育て方は黒松の盆栽の育て方で説明しています。
名前・樹形図鑑「文人木」とは細く長い幹に、少ない枝と葉を上のほうだけに残した軽やかな樹形です。文人画に描かれる樹の姿にちなむ呼び名です。 ›置き場所
一年を通して、よく日の当たる屋外に置きます。松は日照が足りないと葉が長く伸び、内側の枝から弱っていきます。夏も日なたで構いませんが、照り返しの強い床の上は避け、棚の上で風通しよく管理します。
冬は寒さに強いので屋外のままで問題ありません。小さな鉢は鉢土が凍りやすいため、冷たい北風の当たらない場所に移します。
水やりと肥料
土の表面がしっかり乾いてから、鉢底から流れるまで与えます。松は常に湿った状態を嫌うので、乾く前に水を足すのは避けます。春から秋は1日1回、真夏は朝に与えて夕方に乾いていればもう1回が目安です。
肥料は、春(4月〜5月上旬)に控えめに固形の肥料を鉢の縁に置き、芽切りの1か月ほど前に取り除きます。秋(9〜10月)にも置きます。芽切りをする樹は、芽切りの前に肥料が効きすぎていると、二番芽が長く伸びて葉がそろいません。肥料の基本は盆栽の肥料入門で紹介しています。
みどり摘みと芽切り
みどり摘み(4月下旬〜5月)
春に枝先から伸びる新芽を「みどり」と呼びます。みどりは勢いのよいものほど長く伸びるため、そのままにすると枝先の長さがばらばらになります。
図:強いみどりほど短く摘み、長さをそろえます
- みどりが伸びて、葉が開く前のうちに作業する
- 1か所から何本も出ている場合は、2本ほどを残してほかを元から取る
- 残したみどりは、強いものは短く、弱いものは長めに残して先を指で折り取る
芽切り(6月上旬〜中旬)
芽切りは、その春に伸びた新しい枝を元から切り、夏に出る二番芽で葉を短くそろえる作業です。黒松ではよく行われますが、赤松は勢いが穏やかなため、元気で葉の色がよい樹にだけ行います。
時期は黒松より少し早めの6月上旬〜中旬が目安です。弱った樹や植え替えたばかりの樹に芽切りをすると、二番芽が出ずに枝が枯れることがあります。迷うときは、みどり摘みだけにとどめておく方が安全です。
注意
芽切りは、樹に力がないと逆効果になります。葉の色が黄色っぽい、前の年より葉が短く少ないといった樹は、その年は芽切りをせず、日当たりと水やりで勢いを戻すことを優先します。
古葉取りと針金かけ
秋の終わりから冬にかけて、前の年以前の古い葉が黄色くなって残ります。11〜12月ごろ、古い葉を指でつまんで取り除くと、内側まで光と風が入り、翌年の芽が育ちやすくなります。勢いの強い上の枝は葉を多めに抜き、弱い下の枝は多めに残すと、樹全体の勢いがそろってきます。
枝の形を整える針金かけは、樹液の動きが落ち着く秋の終わりから冬に行います。赤松は樹皮が薄く、針金が食い込むと跡が残りやすい樹です。針金は枝に密着させすぎず、春以降は食い込んでいないかをこまめに確かめて、早めに外します。
一年の作業カレンダー
植え替えは、芽が動き出す3月中旬〜4月上旬が適期で、2〜3年に1回が目安です。松の根には白い菌糸(菌根菌)が付いていて、根の生長を助けています。古い土を全部落とさず、一部を残して植え替えます。
図:赤松の一年の作業(関東の平地の目安)
赤松の幹肌を楽しむ
赤松の見どころの一つが、年数とともに赤みを増していく幹肌です。古い樹皮は薄くはがれやすいので、作業のときに幹を強く握ったり、針金やひもでこすったりしないようにします。
幹に苔やほこりが付いて色がくすんだときは、柔らかい歯ブラシで水をかけながら軽く払う程度にします。樹皮をはがすほど強くこすると、かえって赤い肌が損なわれます。日当たりのよい場所で育て、樹の勢いを保つことが、幹肌をきれいに保ついちばんの方法です。
赤松の盆栽を選ぶとき
はじめて赤松を育てるなら、すでにある程度形のできた樹を選ぶと、手入れの流れをつかみやすくなります。
- 葉の色:濃く、つやのある緑のもの。黄色っぽい葉や、枝の内側の葉が少ないものは、勢いが落ちていることがあります。
- 冬芽:秋から冬なら、枝先に赤褐色の冬芽がしっかり付いているもの。
- 根元:幹がぐらつかず、根が四方に張っているもの。
- 幹肌:赤みのある樹皮がはがれずに残っているもの。傷や針金の跡が深く残っていないかも見ます。
葉の様子で分かる不調
| 様子 | 考えられる原因 | 見直すこと |
|---|---|---|
| 葉が長く伸び、間延びする | 日照不足、肥料や水の与えすぎ | よく日の当たる場所へ。水は乾いてから与える |
| 秋に古い葉が黄色くなる | 古い葉が落ちる自然な現象 | 古葉取りで取り除く |
| 新しい葉まで黄色くなる | 根の傷み、水のやりすぎ、根詰まり | 水やりを見直し、春に植え替えを検討する |
| 内側の枝が枯れていく | 光と風が入らない | 古葉取りと枝の整理で内側に光を入れる |
秋に古い葉が黄色くなるのは、新しい葉と入れ替わるための自然な変化です。その年に伸びた葉まで黄色くなっているときに、根や水やりを疑います。
気をつけたい害虫と病気
- マツカレハ:春と秋に葉を食べる毛虫です。樹皮のすき間などで越冬するので、冬から早春に見つけて取り除きます。毛に触れるとかぶれることがあるので注意します。
- カイガラムシ・アブラムシ:枝や葉の付け根に付き、樹液を吸います。すす病の原因にもなるので、見つけたら早めにこすり落とします。
- 葉ふるい病:春先に葉が茶色くなって大量に落ちる病気です。風通しを確保し、落ちた葉は片づけます。
松の仲間をもっと知る
同じ松でも、五葉松は葉が5本ずつまとまってつき、作業の時期も少し違います。五葉松の管理は、こちらで説明しています。
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