黒松は、太く荒れた幹肌と、濃い緑の硬い葉が特徴の松です。海岸の強い風や日差しの中でも育つ樹で、盆栽でも丈夫さでは指折りです。正月飾りや贈り物にも選ばれ、手入れを続ければ何十年と付き合えます。

育て方の要点は、よく日に当てること、水をやりすぎないこと、そして春から秋にかけての芽の手入れです。芽の手入れは種類が多く見えますが、目的は「葉を短くそろえ、枝を増やす」の一つにまとまります。

黒松の盆栽の特徴

黒松は「男松(おまつ)」とも呼ばれ、葉が太く長く、樹勢が強い松です。よく比べられる赤松は葉が細く柔らかく、幹肌が赤みを帯びます。五葉松は葉が5本ずつ束になって短く、樹勢はおだやかです。

樹勢が強いぶん、放っておくと新芽が長く伸び、葉も長くなります。盆栽では、春から秋の芽の手入れでこの勢いを抑え、短い葉が密についた姿に仕立てていきます。

名前・樹形図鑑「千寿丸」とは葉が短い八房性の黒松として出回る品種名です。売り場では「寿」「寿黒松」と書かれていることもあります。 ›

置き場所

一年を通して、日当たりと風通しのよい屋外の棚に置きます。黒松は日光が大好きで、日が足りないと葉が長く間延びし、内側の枝から弱って枯れ込みます。半日しか日が当たらない場所なら、日の当たる時間が長い位置を優先してください。

夏も日なたのままで構いません。ただし、ベランダの床やコンクリートに直接置くと照り返しで鉢が熱くなるので、棚や台に載せます。

冬は寒さに強いので屋外で管理します。小さな鉢は鉢土が凍りやすいため、冷たい北風の当たらない軒下へ移します。室内に飾るのは来客や正月などの2〜3日にとどめ、終わったら屋外に戻します。

水やり

黒松は、土が常に湿っている状態を嫌います。土の表面がしっかり乾いて白っぽくなってから、鉢底から流れ出るまでたっぷり与えます。

春と秋は1日1回、夏は朝に与えて、夕方に乾いていればもう一度与えます。冬は乾きがゆっくりになるので、2〜4日に1回程度、晴れた日の午前中に与えます。乾き具合の見分け方は、こちらで詳しく説明しています。

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ポイント

芽切りの後しばらくは、水と肥料をやや控えめにすると、二番芽の葉が短くそろいやすくなります。乾かしすぎてしおれさせないよう、土の乾き具合は毎日見てください。

肥料

肥料は、春の芽が伸び始める4月ごろから芽切りの前(6月中旬ごろ)までと、暑さがやわらぐ9月〜10月に、ゆっくり効く固形の肥料を鉢の縁に置きます。

真夏と冬は与えません。芽切りをする樹は、春に肥料で樹に力を蓄えておくことが二番芽をそろえる下地になります。芽切りをしない若い樹や、まだ太らせたい樹は、春の肥料をやや多めにして伸ばします。肥料の種類と使い分けは盆栽の肥料の入門にまとめています。

芽の手入れ(みどり摘み・芽切り・芽かき)

春に枝先から伸びる新芽は、緑のろうそくのような形をしていることから「みどり」と呼ばれます。黒松の芽の手入れは、このみどりをどう扱うかで3つに分かれます。

黒松の枝先。新しい葉のあいだから、春の芽と小さな雄花が出ている
写真:ncole458 / CC BY 2.0

みどり摘み(4月中旬〜5月)

伸びたみどりの先を指で折り、長さを半分〜3分の1ほどにします。強く伸びる芽ほど短く、弱い芽は軽く摘むか、そのままにします。まだ樹形を作っている途中の若い樹や、芽切りをするほど樹勢がない樹で行う方法です。

芽切り(6月中旬〜7月上旬)

春に伸びた芽を、元の部分で切り取る作業です。切った跡の周りから夏に「二番芽」が出て、その葉は春の葉より短くなります。枝の数も増えるので、細かな枝ぶりを作りたい樹で行います。

黒松の芽切りの流れ。春に伸びた芽を6月中旬〜7月上旬に元で切ると、短い二番芽が出る。元気な樹だけに行い、弱い芽を先に、強い芽は後で切る
図:芽切りは春の芽を元で切り、短い二番芽を出させる作業です

  1. 樹の上のほうや外側など、勢いの強い枝と弱い枝を見分けておく
  2. 弱い枝の芽を先に、元で切る
  3. 1週間ほどあけて、強い枝の芽を切る
  4. 切った後は水と肥料をやや控えめにして、二番芽を待つ

芽切りは樹に負担がかかる作業です。植え替えたばかりの樹や、葉の色が悪い樹では行いません。初めての年は、樹の一部の枝だけで試してみると、二番芽の出方がつかめます。

芽かき(8月下旬〜9月)

芽切りの跡からは、二番芽が3つ以上まとまって出ることがあります。そのままにすると枝が車輪のように集まって太くなるので、左右に開いた同じくらいの強さの芽を2つ残し、ほかは元から取ります。

古葉取り・もみあげ(11〜12月)

秋になると、2年目の古い葉が黄色くなってきます。これを手で取り除き、今年の葉も樹の部位ごとに量をそろえる作業が「古葉取り」や「もみあげ」です。

勢いの強い上のほうや外側は葉を多めに減らし、弱い下枝や内側は多めに残します。こうすると、弱い部分にも日が届き、樹全体の勢いがならされます。葉を取るときは、葉を下向きに軽く引いて抜きます。枝の皮ごとはがさないよう、力をかけすぎないでください。

針金かけ(11月〜2月)

枝の向きを整える針金かけは、樹の動きが止まる晩秋から冬に行います。古葉取りを済ませた後だと枝が見やすく、針金もかけやすくなります。

針金は枝に沿わせて45度くらいの角度で巻き、枝を少しずつ曲げます。春から秋にかけて幹や枝が太ると針金が食い込むので、跡が残る前に外します。剪定や針金かけの基本は剪定・芽摘み・針金かけの入門で説明しています。

植え替え

植え替えは、芽が動き出す3月下旬〜4月上旬が適期です。黒松は根の伸びがゆっくりな樹なので、若い樹で2〜3年に1回、鉢に収まった樹で3〜5年に1回が目安です。

鉢から抜くと、根の周りに白いカビのようなものが付いていることがあります。これは松の根と共に生きる菌で、根の働きを助けています。古い土を落とすのは3分の1程度にとどめ、この白い菌が付いた土を少し残して植えると、植え替え後の回復が早くなります。

用土は赤玉土に、水はけをよくする桐生砂や川砂を混ぜたものがよく使われます。手順は植え替えのガイドを参考にしてください。

一年の作業カレンダー

関東の平地を想定した目安です。寒い地域では春の作業を2〜3週間遅らせます。

黒松の盆栽の年間作業カレンダー。植え替えは3月下旬〜4月上旬、みどり摘みは4月中旬〜5月、芽切りは6月中旬〜7月上旬、芽かきは8月下旬〜9月、古葉取りは11〜12月、針金かけは11月〜2月、肥料は4月〜6月中旬と9〜10月
図:黒松の一年の作業(関東の平地の目安)

時期 樹の様子 主な作業
3〜4月 芽が動き出す 植え替え。肥料を始める
4〜5月 みどりが伸びる 若い樹はみどり摘み。アブラムシの確認
6月中旬〜7月上旬 春の芽が固まる 元気な樹は芽切り。肥料はいったん止める
7〜8月 二番芽が伸びる 日なたで管理。水切れと照り返しに注意
9〜10月 秋の生長 芽かき。肥料を再開し、10月で終える
11〜12月 古い葉が黄ばむ 古葉取り・もみあげ。針金かけを始める
1〜2月 休眠 針金かけ。鉢土の凍結を防ぐ

葉の様子で分かる不調と害虫

  • 葉が全体に黄色っぽく、つやがない:水のやりすぎによる根の傷み、日照不足が考えられます。秋の古い葉が黄ばむのは自然なことなので、新しい葉の色で判断します。
  • 葉先から茶色く枯れる:真夏の水切れのほか、根詰まりで水が回っていない場合があります。
  • 枝や葉の付け根に白や茶色の小さな粒が付く:カイガラムシです。歯ブラシなどでこすり落とします。
  • 葉を食べる毛虫がいる:マツカレハの幼虫です。毛に触れるとかぶれることがあるので、手袋をして割りばしなどで取り除きます。
  • 葉が黒いすすを被ったようになる:アブラムシやカイガラムシの排泄物にカビが生える「すす病」です。原因の虫を先に退治します。

黒松は正月の飾りや贈り物としてもよく選ばれます。同じ松の仲間の育て方は五葉松の盆栽の育て方で、黒松の盆栽を探すときは黒松の盆栽一覧をご覧ください。