もみじの盆栽を選ぶとき、売り場でよく目にするのが「山もみじ」と「野村もみじ」です。どちらも同じもみじの仲間ですが、山もみじは緑の葉が秋に色づく樹、野村もみじは春から赤い葉を楽しむ園芸品種で、見どころの季節が違います。

結論から書くと、小さな鉢で細かい枝ぶりを作りたいなら山もみじ、春から赤い葉を眺めたいなら野村もみじが向いています。以下で、違いを順に見ていきます。

二つの品種のあらまし

山もみじは、日本の山に自生するもみじの総称として使われる呼び名で、盆栽ではイロハモミジやヤマモミジの実生(種から育てた樹)や挿し木が多く出回っています。春の新芽はやや赤みを帯び、夏は明るい緑、秋に赤・橙・黄に色づきます。秋の色は一本一本で違い、同じ山もみじでも真っ赤になる樹と黄色が勝つ樹があります。

野村もみじは、春に開く葉が濃い赤紫色になる園芸品種で、庭木としてもよく植えられています。夏にかけて葉の色が暗い赤褐色から緑がかった色に落ち着き、秋に再び赤く色づきます。葉は山もみじより大きめで、樹の勢いも強めです。

もみじ全般の育て方は、こちらで詳しく説明しています。

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季節ごとの葉の色

二つの品種の違いが一番よく分かるのは、春と夏の葉の色です。

山もみじと野村もみじの葉の色の一年。山もみじは春に黄緑、夏に緑、秋に赤や黄色。野村もみじは春に赤紫、夏に赤褐色から緑がかった色、秋に赤
図:春と夏の葉の色が、二つの品種のいちばんの違いです

山もみじは、芽吹きの黄緑から夏の濃い緑、秋の紅葉へと、色の変化そのものを楽しむ樹です。野村もみじは、春の赤い葉が見どころで、秋の紅葉は山もみじほどの色の幅はありません。

葉を落とした冬は、どちらも枝ぶりが見どころになります。細かい枝が多い山もみじは、冬の姿もまた楽しめる樹です。野村もみじは枝が太く長めなので、冬は枝の流れや幹の立ち上がりを眺める楽しみ方になります。

赤く色づいたもみじの葉
写真:Wobbly Monkey / CC BY 2.0

比べてみると

比べる点 山もみじ 野村もみじ
春の葉 黄緑(新芽は赤みを帯びることも) 濃い赤紫
夏の葉 緑 赤褐色〜緑がかった色
秋の葉 赤・橙・黄(樹によって違う) 赤
葉の大きさ 小さめ。小さな鉢でも釣り合う 大きめ
枝の細かさ 節が詰まり、細かい枝が作りやすい 枝が伸びやすく、細かくするには手間がかかる
夏の日差し 葉焼けに注意 赤い葉は特に葉焼けしやすい
向いている楽しみ方 小品〜ミニ盆栽、雑木林の寄せ植え 春の色を楽しむ鉢、庭木に近い大きさの鉢

葉の大きさと枝ぶり

盆栽では、樹の大きさに対して葉が大きすぎると、全体がぼんやりした印象になります。山もみじは葉が小さく、芽摘みや剪定をすると節の間が詰まって細かい枝がよく出るので、高さ20cm前後の小さな鉢でも形を作りやすい樹です。

野村もみじは葉が大きく、枝も長く伸びやすいため、小さな鉢で細かな枝ぶりを作るには手間がかかります。高さのある鉢や、葉の色を楽しむことを主にした鉢に向いています。

山もみじと野村もみじの葉の大きさと枝ぶりの比較。山もみじは葉が小さく節が詰まる。野村もみじは葉が大きく節の間が長い
図:同じ長さの枝で比べると、山もみじのほうが節が詰まり、葉も小さくなります

品種ごとの管理の違い

置き場所

どちらも、春と秋は日当たりと風通しのよい屋外に置き、夏は午後の日差しを避けます。野村もみじの赤い葉は日差しで傷みやすく、西日に当たると葉の縁から茶色く焼けて、夏の間ずっと見た目が悪くなります。午前中だけ日が当たる場所を選ぶか、すだれで日差しをやわらげます。

一方で、日当たりが悪すぎると野村もみじの葉の赤みは薄くなり、山もみじも枝が間延びします。半日は日に当たる場所が目安です。

水やり

どちらも水を好みます。土の表面が乾いたら鉢底から流れ出るまで与え、真夏は朝夕の2回になる日もあります。野村もみじは葉が大きいぶん水を多く使うので、同じ大きさの鉢なら山もみじより乾きが早いことがあります。

肥料

春の葉が開ききったあとと、秋の涼しくなったころに、ゆっくり効く固形の肥料を少なめに置きます。山もみじは肥料を多くすると枝が太り、細かい枝ぶりが崩れます。野村もみじは肥料が効きすぎると葉の赤みがあせて緑がちになることがあるので、どちらも控えめが基本です。

ポイント

葉の色をきれいに保つには、夏に葉を傷めないことが一番です。水切れと西日を避けて夏を越した葉は、秋の色づきもよくなります。

選び方の目安

  • はじめての一鉢で、季節の変化を全部楽しみたい → 山もみじ。丈夫で、芽吹きから紅葉、冬の枝ぶりまで見どころが続きます。
  • 小さな鉢で樹形を作っていきたい → 山もみじ。葉が小さく、芽摘みの効果が出やすい樹です。
  • 春の赤い葉を玄関先やベランダで眺めたい → 野村もみじ。春から初夏まで色が楽しめます。
  • 午後に強い日が当たる場所しかない → どちらも葉焼けに注意が必要です。日よけを用意できないなら、ほかの樹種も検討します。

買うときの見分け方

札がついていないときは、季節によって見分けます。春から初夏に葉が濃い赤紫なら野村もみじの可能性が高く、緑なら山もみじです。ただし、春に赤い葉を出すもみじはほかにもあり(出猩々など)、夏に葉の色が変わってくる点も合わせて見ると確かです。

もう一つの手がかりが、幹の根元近くです。野村もみじのような園芸品種は、別のもみじの台木に枝を接いで増やすことが多く、根元に接いだ跡の段差が残っていることがあります。盆栽では接ぎ口が目立たないものほど見栄えがよいので、幹の立ち上がりもよく見ます。種から育てた山もみじには、接ぎ口はありません。

買うときは、葉の色だけでなく、幹の立ち上がりと根元の張り、枝の配置を見ます。紅葉の色は樹によって違うので、色づいた時期に実物を見て選べるなら、それがいちばん確かです。

季節の目安

山もみじの紅葉は、関東の平地で11月中旬から12月初めごろです。野村もみじの赤い葉は、芽吹きの4月から初夏にかけてが見ごろです。

秋に色づく樹をもみじ以外とも比べたいときは紅葉を楽しむ盆栽の選び方を、もみじの盆栽を探すときはもみじの盆栽一覧をご覧ください。