盆栽の水やりで迷うのは、「今、水が足りているのか」が鉢の外から見えにくいからです。けれども樹は、水が足りなくなると葉の張りや向きで知らせてくれます。
ここでは、樹の中を水がどう流れているかを簡単に説明したうえで、葉のサインの読み方と、しおれたときにどう判断するかをまとめます。水やりの回数や時間帯の目安は、別の記事で詳しく扱っています。
あわせて読みたい盆栽の水やり|乾いたかの見分け方と、季節ごとの回数・時間帯の目安記事を読む ›水は根から葉へ流れている
樹が吸った水の多くは、体に残るのではなく、葉の裏にある小さな穴(気孔)から水蒸気として空気中へ出ていきます。これを蒸散といいます。葉から水が出ていくと、そのぶん幹や枝の中の水が引き上げられ、根から新しい水が吸われます。
図:水は根から吸われ、葉から出ていきます。根には空気も必要です
蒸散には、葉の温度が上がりすぎるのを防ぐ働きもあります。夏の日なたで葉が焼けずにいられるのは、水が十分に流れているからです。
根には水と空気の両方が必要
根は水を吸うだけでなく、呼吸もしています。そのため、土の粒と粒のすき間に空気があることが欠かせません。
鉢底から流れ出るほど水を与えると、古い空気が押し出され、乾いていく間に新しい空気が入ります。反対に、いつも土が湿ったままだとすき間が水でふさがれ、根が息苦しくなって傷みます。これが根腐れの始まりです。
症状から調べる盆栽の葉がしおれる・垂れるとき考えられる原因と、今すぐやること・様子を見ること ›乾き方が日によって変わる理由
葉から出ていく水の量は、天気によって大きく変わります。鉢の乾き方が毎日同じにならないのはこのためです。
| 条件 | 葉から出る水 | 鉢の乾き方 |
|---|---|---|
| 晴れて気温が高い | 多い | 早い |
| 風が強い | 多い | 早い |
| 曇り・雨 | 少ない | 遅い |
| 湿度が高い(梅雨など) | 少ない | 遅いが蒸れやすい |
| 落葉樹の冬(葉がない) | ほとんどない | とても遅い |
真夏の晴れた日に朝夕2回の水やりが必要になる一方、梅雨どきは2日たっても湿っていることがあります。「毎日同じ時間に」と決めるより、その日の天気を見て乾き具合を確かめるほうが確実です。
水が足りないときの葉の変化
水が足りなくなると、葉は次のような順に変化します。早い段階で気づくほど、樹への負担は小さくて済みます。
図:「つやが減る」段階で気づけると、樹への負担はほとんどありません
- 元気:葉に張りがあり、上や横を向いています。
- つやが減る:葉の表面の光沢が鈍くなり、なんとなく元気がなく見えます。この段階なら、水を与えれば数時間で戻ります。
- しおれる:葉が下を向き、やわらかい新芽の先が垂れます。日陰に移してすぐに水を与えます。
- 葉先が枯れる:葉の縁や先が茶色くチリチリになります。水を与えても、その葉は元に戻りません。
松や真柏のように葉が硬い樹は、しおれが目に見えにくいのが難点です。葉の色がくすむ、新芽の先が垂れる、といった小さな変化に注意します。
ポイント
朝の水やりのとき、葉の張りとつやを一度見る習慣をつけると、不調にすぐ気づけるようになります。
しおれていても、水が原因とは限らない
葉がしおれていても、いつも水が足りないとは限りません。根が傷んで水を吸えないときも、葉には同じようにしおれが出ます。この場合に水を足すと、根の状態がさらに悪くなります。
図:しおれたら、まず土を触って確かめます
- 土が乾いている:水切れです。日陰に移し、鉢底から流れ出るまで与えます。土が乾ききって水をはじくときは、水を張ったバケツに鉢ごと数分沈めると全体に行き渡ります。
- 土が湿っているのにしおれる:根腐れや、根詰まりで根が働いていない可能性があります。水は足さずに乾くのを待ち、風通しのよい半日陰に置きます。
- 真夏の昼だけしおれる:暑さで一時的に水の流れが追いつかないことがあります。夕方に戻るなら大きな心配はいりませんが、毎日続くなら午後の日差しを避ける場所に移します。
根の状態が悪くなる原因と対策は、根詰まりの症状と対策で詳しく説明しています。
注意
「元気がない → 水をあげる」をくり返すと、根腐れのときに状態を悪化させてしまいます。しおれを見たら、水を与える前に必ず土を触ってください。
樹の種類と季節による違い
落葉樹(もみじ・欅・さつきなど)
葉が薄く、春から夏にかけて水をよく使います。水切れに弱く、夏に一度でも葉を傷めると、秋の紅葉や翌年の芽にまで影響が出ます。冬は葉がないため水をほとんど使わず、乾くまでの日数が長くなります。
常緑樹(松・真柏など)
葉が硬く表面がしっかりしているので、葉から出ていく水は落葉樹より少なめです。そのぶん乾きすぎには比較的強い一方、湿ったままの状態が続くと根を傷めやすい樹が多くあります。冬も葉が残るので、晴れて風の強い日には思ったより乾きます。
季節ごとの目安
- 春:芽が伸び始めると水の使い方が急に増えます。冬と同じ感覚でいると、芽吹きの時期に水切れを起こしがちです。
- 夏:一年で最も乾きやすい季節です。朝の水やりを基本に、夕方にも乾き具合を確かめます。夏の管理は盆栽の夏の管理も参考にしてください。
- 秋:気温が下がるにつれて乾き方がゆっくりになります。夏の回数のまま続けないようにします。
- 冬:落葉樹は特に乾きにくくなります。乾いたのを確かめ、晴れた日の午前中に与えます。
もみじのように葉が薄い樹は、水が足りなくなるとまず葉先から変化が出ます。毎日の水やりのついでに葉を見るだけでも、多くの失敗は防げます。枯れる原因を全体から見直したいときは、こちらにまとめています。
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