桜の盆栽は、小さな鉢でも春に満開の花を見られるのが楽しみです。ただ、花が咲くまでの準備は前の年の夏から始まっています。来年の花芽は夏にでき、冬の寒さに当たってから春に開きます。

この流れを知っておくと、剪定の時期や冬の置き場所で迷わなくなります。ここでは品種の選び方から、花を毎年咲かせるための一年の管理までを順に説明します。

盆栽で出回る桜の種類

盆栽店や園芸店でよく見かけるのは、若い木でも花をつけやすい品種です。「一才桜(いっさいざくら)」は、植えて間もない小さな苗でも咲く性質の桜をまとめた呼び名で、品種名ではありません。売り場で一才桜とされているものには、旭山(あさひやま)や、富士桜(マメザクラ)の仲間の品種が多く見られます。

種類 花の特徴 盆栽での扱いやすさ
旭山 淡い紅色の八重咲き。木が小さいうちから咲く 樹が大きくなりにくく、小さな鉢に向く
富士桜(マメザクラ)の仲間 小ぶりの一重咲きで、うつむき加減に咲く 枝が細かく、小品盆栽に仕立てやすい
枝垂れ桜 枝が垂れ下がり、一重の花が枝に沿って咲く 枝を垂らすための支えや剪定に慣れが必要
八重桜(関山など) 花が大きく豪華 樹勢が強く、鉢が小さいと持て余しやすい

はじめての一鉢なら、旭山や富士桜の仲間が扱いやすい選択です。一才桜だけを詳しく知りたいときは一才桜の盆栽ガイド、枝垂れの仕立て方はシダレザクラの盆栽ガイドも参考になります。

買うときに見るところ

  • 冬〜早春に買う場合:枝先に丸くふくらんだ芽(花芽)がいくつあるか。花芽が多いほど、その春の花は期待できます。
  • 花の時期に買う場合:つぼみが多く、まだ咲ききっていない株を選ぶと長く楽しめます。
  • 幹と根元:幹にヤニが出ていたり、根元に木くずのようなものがあったりする株は避けます。
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一年の流れと、剪定を花後に行う理由

桜は、春に伸びた新しい枝の付け根に、7〜8月ごろ翌年の花芽をつくります。秋から冬に枝を切ると、せっかくできた花芽を一緒に落としてしまいます。形を整える剪定は、花が散った直後にまとめて行うのが基本です。

桜の花芽と葉芽の見分け方。丸くふっくらした芽が花芽、細くとがった芽が葉芽。花後すぐ、伸びた枝を2〜3芽残して切る。夏に新しい枝の付け根に来年の花芽ができる
図:花芽は丸く、葉芽は細い。剪定は花が散った直後に行います

  1. 花が散ったら、伸びすぎた枝を2〜3芽残して切り戻します。
  2. 枯れた枝、内側に向かう枝、ほかの枝と交差する枝は元から切ります。
  3. 太い枝を切った切り口には癒合剤を塗ります。桜は切り口から傷みやすい樹です。

冬に行うのは、枯れ枝と明らかに込み合った枝の整理だけにとどめます。剪定全般の考え方は剪定のガイドで説明しています。

注意

桜は太い枝を切ると、切り口から枯れ込むことがあります。太い枝を落とすのは元気な樹に限り、切り口は必ず保護してください。

置き場所と水やり

春から秋は、日当たりと風通しのよい屋外の棚に置きます。日が足りないと枝ばかり伸び、花芽が少なくなります。真夏は西日と照り返しで葉が傷みやすいので、午後だけ日陰になる場所に移すか、遮光ネットで日差しを和らげます。

水やりは、土の表面が乾いたら鉢底から流れ出るまで与えます。春と秋は1日1回、真夏は朝夕の2回が目安です。花芽ができる7〜8月に水切れさせると、葉が傷んで翌春の花が減ります。

季節の目安

花の時期は、花びらに水がかかると早く散ります。開花中は株元の土に向けて静かに水を与えると、花が長く持ちます。

冬は落葉して休眠しますが、鉢の土は乾きます。土が乾いていたら、晴れた日の午前中に与えます。季節ごとの乾き方の見分け方は、こちらで説明しています。

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肥料と植え替え

肥料は、花が終わって葉が開いたころから梅雨前までと、暑さが落ち着く9月中旬〜10月に、ゆっくり効く固形の肥料を鉢の縁に置きます。真夏と冬は与えません。窒素の多い肥料を多く与えると、枝や葉ばかり茂って花芽がつきにくくなります。

植え替えは、芽が動き出す前の2月下旬〜3月中旬が適期です。小さな鉢は1〜2年に1回、根が鉢に回って水が染み込みにくくなったら時期です。古い土を3分の1ほど落とし、傷んだ根を整理して、小粒の赤玉土を主体にした土で植えます。植え替えた年は、つぼみの一部を摘んで花の数を控えると、樹の負担が軽くなります。手順は植え替えのガイドで詳しく説明しています。

一年の作業カレンダー

関東の平地を想定した目安です。寒い地域では春の作業を2〜3週間遅らせてください。

桜の盆栽の年間作業カレンダー。開花は3月下旬〜4月中旬、剪定は花後の4月下旬〜5月、植え替えは2月下旬〜3月中旬、肥料は花後〜梅雨前と9月中旬〜10月、花芽ができるのは7〜8月、夏の日よけは7〜9月上旬、冬は12〜2月に屋外で寒さに当てる
図:桜の一年の作業(関東の平地の目安)

時期 樹の様子 主な作業
2〜3月 芽がふくらむ 植え替え。つぼみの数を確かめる
3月下旬〜4月 開花 雨と強風を避けて花を楽しむ。花に水をかけない
4月下旬〜5月 葉が開く 花後の剪定。肥料を始める。アブラムシの確認
6〜8月 枝が伸び、花芽ができる 水切れ防止。真夏は午後の日差しを避ける。毛虫に注意
9〜11月 葉が色づき、落葉 肥料を10月で終える。枝は切らない
12〜2月 休眠 屋外で寒さに当てる。鉢土の凍結を防ぐ

冬は屋外で寒さに当てる

桜の花芽は、冬の一定の寒さに当たることで春に開く準備が整います。暖かい室内に置き続けると、春になっても花がそろわなかったり、つぼみのまま落ちたりします。冬も屋外に置き、冷たい北風と鉢土の凍結だけを防ぐのが基本です。小さな鉢は、軒下や棚の下段に移すと安心です。

咲き始めたら、室内に取り込んで飾るのもよい楽しみ方です。暖房の効いた部屋では花が早く散るので、飾るのは数日にとどめ、夜は涼しい場所か屋外に戻します。

花が咲かないときは

桜の盆栽の花が咲かないときに見直す4つの点。冬に室内に置いて寒さが足りない、夏の水切れで花芽が育たない、秋冬の剪定で花芽を切り落とした、日陰や肥料の与えすぎで枝ばかり伸びる
図:花が咲かないときに見直したい4つの点

  • 冬に室内に置いていた:寒さが足りず、花芽が目覚めません。冬は屋外で管理します。
  • 夏に水切れさせた:葉が傷むと花芽が十分に育ちません。7〜8月は朝夕に鉢を見ます。
  • 秋や冬に枝を切った:できていた花芽を落としています。剪定は花後に済ませます。
  • 日当たりが悪い・肥料が多い:枝葉ばかり茂ります。日なたに置き、肥料は控えめにします。

害虫では、春のアブラムシと、初夏から夏の毛虫に気をつけます。毛虫は短い間に葉を食べ尽くすことがあるので、葉が急に減っていたら葉の裏を確かめてください。

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