東南アジアの国々にも、盆栽の文化があります。ベトナムの寺院の庭や、タイ・フィリピンの愛好家の棚には、ガジュマルの仲間(フィカス)、フクマンギ、ブーゲンビリア、ゲッキツなど、一年中暖かい地域で育つ樹が並びます。

こうした熱帯の樹は、日本では「室内でも育てやすい盆栽」として売られていることが多い樹です。ただ、本来は強い日差しと雨の多い環境で育つ植物なので、その性質を知っておくと、日本の夏と冬をどう乗り切るかが分かりやすくなります。

東南アジアの盆栽の特徴

東南アジアの多くの地域は、一年を通して気温が高く、雨の多い季節(雨季)と少ない季節(乾季)がはっきりしています。日本のように冬に休む期間がないため、樹はほぼ一年中伸び続けます。

そのため、現地の盆栽は枝の伸びが早く、剪定の回数も多くなります。太い幹から気根が垂れ下がるガジュマルの仲間や、花が長く楽しめるブーゲンビリアなど、生長の勢いを生かした樹形がよく見られます。ベトナムでは、岩と植物で山の景色を表す鉢景色の伝統もあります。

よく使われる樹と性質

日本でも手に入りやすい樹を中心にまとめました。寒さに耐えられる温度は、株の状態や乾き具合でも変わるため、あくまで目安です。

樹 特徴 日本で育てるときの注意
ガジュマル・フィカスの仲間 気根が出て幹が太りやすい。剪定によく耐える 寒さには比較的強いが、霜には当てない
フクマンギ(福建茶) 小さな光沢のある葉と白い花。枝が細かくなる 寒さと乾燥に弱い。冬は暖かい室内で
ブーゲンビリア 色のついた苞(ほう)が長く楽しめる 日によく当てないと花が咲きにくい
ゲッキツ(シルクジャスミン) 香りのよい白い花と赤い実 寒さに弱め。冬は室内の明るい場所に
ミズガンピ 海岸の岩場に育つ樹。幹が締まりやすい 生長がゆっくりで、水切れに注意

ガジュマルの育て方は、別の記事で詳しく説明しています。

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高温多湿で根を傷めないために

熱帯の樹は水を好みますが、雨季に鉢の中が水浸しのままになると根が傷みます。現地の盆栽では、水はけのよい粒の大きい用土を使い、鉢を地面から離して置くのが一般的です。日本の梅雨や秋の長雨も、同じ考え方で乗り切れます。

鉢の断面の比較。粒の大きい土で鉢底に大粒を入れ台に載せた鉢は水が抜ける。細かい土が詰まり受け皿に水がたまった鉢は水が残る
図:雨の多い時期は、水が鉢の中に残らないことが大切です

  • 用土:赤玉土の小粒を中心に、軽石や日向土を2〜3割混ぜて水はけをよくします。粒がつぶれて細かくなった古い土は、植え替えで取り替えます。
  • 鉢の置き方:棚や台の上に置き、鉢底の穴をふさがないようにします。受け皿を使う場合は、たまった水を毎回捨てます。
  • 水やり:土の表面が乾いたら、鉢底から流れ出るまで与えます。雨の日が続くときは、鉢を軒下に移して与えすぎを防ぎます。

ポイント

熱帯の樹は「水が多いほどよい」わけではありません。たっぷり与えて、すぐ抜ける。この繰り返しが、根を元気に保つ条件です。

日本で育てるときの一年

日本の夏は、熱帯の樹にとっては生長期です。5月ごろから10月ごろまでは屋外の日当たりのよい場所に置くと、葉が締まり、枝もよく伸びます。植え替えや剪定は、気温が十分に上がった5〜7月が向いています。

熱帯の樹を日本で育てる年間カレンダー。屋外は5月〜10月、ほかは室内。植え替えは5月中旬〜7月、剪定は5月中旬〜9月、肥料は5月〜10月、夏の日よけは7〜8月、葉水は6〜9月
図:熱帯の樹の一年(関東の平地の目安)

最低気温が10℃を下回るようになったら、室内の明るい窓辺に移します。暖房の風が直接当たる場所は乾燥しすぎるので避け、霧吹きで葉に水をかけて湿度を補います。春に外へ戻すときは、いきなり直射日光に当てず、日陰から数日かけて慣らすと葉焼けを防げます。

室内での置き方や光の取り方は、こちらで説明しています。

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注意

真夏の西日や、コンクリートの照り返しは熱帯の樹でも葉を傷めます。7〜8月は午後に日陰になる場所に置くか、遮光ネットで日差しを和らげます。

肥料と剪定

生長期が長い熱帯の樹は、肥料もよく吸います。5月から10月にかけて、ゆっくり効く固形の肥料を月に1回ほど鉢の縁に置きます。室内に取り込んでいる間は与えません。

剪定は、伸びた枝を2〜3枚の葉を残して切り戻すのが基本です。ガジュマルの仲間は切り口から白い樹液が出ますが、しばらくすると止まります。太い枝を切ったときは、癒合剤を塗っておきます。

つきやすい害虫

暖かく風通しの悪い場所では、次の虫がつきやすくなります。室内に取り込んだ冬の時期にも出るので、葉の裏までときどき確かめます。

  • カイガラムシ:枝や葉の付け根に白や茶色の小さな粒がつきます。歯ブラシなどでこすり落とします。
  • ハダニ:葉の色がかすれたように白っぽくなります。乾燥で増えやすいので、葉水で予防します。
  • アブラムシ:新芽に集まります。数が少なければ手で取り除き、多い場合は園芸用の殺虫剤を使います。

世界の盆栽とのつながり

東南アジアの盆栽は、日本や中国の盆栽の影響を受けながら、その土地の樹と気候に合わせて発展してきました。地域ごとの違いに興味があれば、海外の盆栽事情や中国盆景との違いもあわせて読んでみてください。

ベトナム・フエの寺院の前に飾られた、青と白の鉢に植えられた盆栽
写真:PiktourUK / CC BY 2.0

なお、海外から生きた樹を持ち込むには植物検疫の手続きが必要で、土のついた植物は持ち込めない場合がほとんどです。現地で気に入った樹があっても、日本で同じ種類を探すほうが現実的です。手続きの概要は盆栽の国際輸出入ガイドにまとめています。