盆栽は日本の文化を伝える贈り物として選ばれることがあります。ただ、生きた植物は国境をまたぐと検疫の対象になり、ほかの贈り物と同じ感覚では送れません。相手の国の気候で育てられるか、手入れを続けられるかも考える必要があります。

ここでは、海外の人に盆栽を贈るときの考え方を、検疫の基本、贈り方の選び方、添えたい説明の順にまとめます。

まず知っておきたい:植物には検疫がある

植物を外国に持ち込むときは、病害虫が入り込むのを防ぐために、相手の国の決まりに沿った検査を受ける必要があります。日本から植物を送る、または持って行く場合は、農林水産省の植物防疫所で輸出検査を受け、相手の国が求める場合は植物検疫証明書を発行してもらいます。

決まりは国ごとに違い、持ち込めない樹種や、条件付きで認められる樹種があります。また、土の付いた植物は多くの国で持ち込みが禁止されているか、厳しく制限されています。盆栽は鉢と土ごと育てるものなので、この点がいちばんの壁になります。

注意

決まりは変わることがあります。贈る国が決まったら、早めに植物防疫所に相談し、最新の条件を確かめてください。条件に合わない植物は、空港などで没収や処分の対象になります。

国外への持ち出しや輸送の手続きは、こちらで詳しく説明しています。

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3つの贈り方を比べる

検疫の手間を考えると、贈り方は大きく3つに分かれます。

海外の人へ盆栽を贈る3つの方法の比較。日本から持参は検疫と証明書が必要で準備に時間がかかる。相手の国で用意すれば手軽で、その土地の気候に合う樹を選べる。盆栽以外を贈れば検疫の心配がない
図:日本から持参する、相手の国で用意する、盆栽以外を贈る

贈り方 よいところ 気をつけたいこと
日本から持参・発送する 日本で育った樹をそのまま渡せる 検疫の条件を満たす準備が必要。土を落とすなどで樹に負担がかかる
相手の国で用意する 検疫の心配が少なく、その土地の気候に合う樹を選べる 現地の盆栽店や園を探す手間がかかる
盆栽以外を贈る 鉢や道具、本、写真集なら検疫の対象になりにくい 植物ではないので、盆栽を始めたい人には次の一歩の案内を添える

盆栽をすでに楽しんでいる人には、日本の鉢や手入れの道具が喜ばれることがあります。これから始めたい人には、盆栽の本や、来日の機会に盆栽園の見学や体験教室へ一緒に行くといった「体験」を贈る方法もあります。

ポイント

迷ったら、植物そのものより「盆栽を楽しむきっかけ」を贈ると考えると選びやすくなります。鉢や道具は検疫の心配が少なく、長く使ってもらえます。

日本から送るときの流れ

それでも日本から盆栽を贈りたい場合は、次の順に準備を進めます。時間に余裕を持って、少なくとも数か月前から動き始めると安心です。

日本から盆栽を送るときの流れ。相手の国の条件を調べる、植物防疫所に相談する、土を落とすなど条件に合わせて準備する、輸出検査を受けて証明書を発行してもらう、送る・持っていく。相手国でも検査がある
図:日本から送るときの大まかな流れ

  1. 相手の国が、その樹種の持ち込みを認めているか、どんな条件があるかを調べる
  2. 植物防疫所に相談し、必要な検査や書類を確かめる
  3. 条件に合わせて準備する(土を落として根を洗う、指定の資材に植え替えるなど)
  4. 輸出検査を受け、証明書を発行してもらう
  5. 発送するか持って行く。相手の国に着いてからも検査がある

土を落とす作業は樹にとって負担が大きく、時期を選びます。根をいじってよい時期は樹種によって違うので、育てている盆栽園などに相談してください。

相手の土地で育てられるかを考える

検疫の問題をクリアできても、相手の暮らす土地の気候で育てられなければ、贈った樹はすぐに弱ってしまいます。樹を選ぶ前に、次の点を考えておきます。

  • 冬の寒さ:冬に厳しく冷え込む地域では、鉢の土が凍って根が傷むことがあります。寒さに強い樹種を選ぶか、冬の守り方を伝えます。
  • 夏の暑さと乾燥:暑く乾いた地域では、小さな鉢はすぐに水切れします。少し大きめの鉢の樹のほうが管理しやすくなります。
  • 暮らし方:庭やベランダがあるか、室内で過ごすことが多いか。屋外に置く場所がない人には、室内でも育てやすい樹種のほうが向いています。
  • 手入れの経験:初めて盆栽を育てる人には、丈夫で、水やりの加減が分かりやすい樹種が安心です。

その土地でよく育つ樹は、現地の園芸店や盆栽店がいちばんよく知っています。相手の国で用意する方法が勧めやすいのは、このためでもあります。

来日した人に贈るとき

日本に来ている人に盆栽を渡す場合も、本人が持ち帰るなら同じように検疫の問題があります。渡す前に、持ち帰れるかどうかを本人と一緒に確かめておくのが親切です。持ち帰りが難しい場合は、滞在中に飾って楽しめる小さな苔玉や、日本の鉢、盆栽の写真集などに切り替えます。

贈るときに添えたいもの

盆栽は贈ったあとの手入れが大切です。相手が手入れの仕方を知らない場合は、短い説明を英語などで添えておくと、枯らしてしまう心配が減ります。

  • 樹種名:日本語の名前と、英語名や学名
  • 置き場所:屋外か室内か。日当たりの目安
  • 水やり:「土の表面が乾いたら、鉢底から流れるまで」
  • 冬の扱い:霜や凍結から守る必要があるか

手入れの説明に使える英語の言い方は、盆栽の英語表現ガイドにまとめています。

長い年月をかけて仕立てられた五葉松の盆栽。ワシントンの国立樹木園の盆栽・盆景博物館で展示されている
写真:Ron Cogswell / CC BY 2.0

文化の違いへの配慮

花や数字、色の受け取り方は国や地域、宗教によって違います。一般論で決めつけず、相手のことをよく知っている人に聞くか、本人の好みをさりげなく確かめるのが確実です。

日本の中でも、鉢植えは「根付く」ことから、お見舞いには避けたほうがよいとされることがあります。相手の国の習慣に加えて、場面に合うかどうかも考えて選びます。

贈る場面での格式を気にしすぎる必要はありませんが、渡すときに「どんな樹で、どう楽しむものか」を一言添えると、贈り物の意味が伝わりやすくなります。

盆栽が海外へ贈られた例

盆栽が国と国の友好の贈り物になった例としてよく知られているのが、1976年にアメリカの建国200年を記念して、日本盆栽協会から53鉢の盆栽が贈られたことです。この盆栽は、ワシントンにある国立樹木園の盆栽・盆景博物館のはじまりになりました。

なかでも、広島で育てられていた五葉松は、1945年の原爆に遭いながら生き残った樹として知られ、今も展示されています。

海外へ向けた贈り物の選び方は、こちらでも紹介しています。

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