姫リンゴは、4月ごろに白から淡い紅色の花を咲かせ、秋に小さな赤い実をつけるリンゴの仲間です。実は直径2〜3cmほどと小さく、鉢植えでもたくさんつくため、実もの盆栽の入門としてよく選ばれます。
丈夫な樹ですが、花が咲いても実がつかないという相談の多い樹でもあります。理由の多くは受粉と剪定にあるので、この二つを中心に説明します。
姫リンゴの性質
姫リンゴは日当たりを好む落葉樹です。寒さには強く、冬は葉を落として休眠します。春に新しい枝が伸び、その年の夏に、翌年の花になる芽(花芽)がつくられます。
実をつけるうえで知っておきたいのは、自分の花の花粉だけでは実がつきにくい性質があることです。1鉢だけで育てていると、花がたくさん咲いても実がほとんど残らないことがあります。
今月の手入れ10月の実ものの手入れ水やりの目安・置き場所・肥料と、今月の作業 ›置き場所
一年を通して、日当たりと風通しのよい屋外に置きます。日照が足りないと花芽がつきにくくなり、翌年の花と実が減ります。
夏は、強い西日が当たると鉢の中の温度が上がり、水切れもしやすくなります。午後は日陰になる場所に移すか、すだれなどで日差しを和らげます。冬は屋外のままで構いませんが、冷たい北風が当たる場所や、鉢土が凍りやすい場所は避けます。
室内に飾るのは、花の時期や実の時期に2〜3日までにします。
水やり
土の表面が乾いたら、鉢底から流れ出るまで与えます。春から秋は1日1回が目安で、真夏は朝夕の2回になる日もあります。実がついている時期に水切れさせると、実が落ちたりしぼんだりするので、夏から秋は特に乾かさないようにします。
花が咲いている間は、花に水がかからないよう株元に注ぎます。花粉が流れると受粉しにくくなります。
実をつけるための人工授粉
実をつけたいときは、開花の時期に別の品種の花粉をつけてあげます。花粉をとる樹としては、別の品種のリンゴや、ズミ、カイドウの仲間などが使われます。開花の時期が重なっていることが条件なので、2鉢以上をそろえて育てる方もいます。
図:別の品種の花粉を、やわらかい筆で姫リンゴの花に移します
- 晴れて風の弱い日の午前中を選ぶ
- 別の品種の、開いたばかりの花を筆の先で軽くなでて花粉をとる
- 姫リンゴの開いた花の中心(めしべ)に、筆先でそっとつける
- 数日のあいだ、新しく開いた花にも同じようにくり返す
受粉がうまくいくと、花びらが落ちたあとに花の付け根がふくらみ始めます。
ポイント
屋外に置いていれば、ハチなどの虫が花粉を運んでくれることもあります。ただ、ベランダや都市部では虫が少ないことが多いので、確実に実をつけたいときは人工授粉をしておくと安心です。
摘果
実がたくさんついたら、5〜6月ごろに数を減らします。実をつけすぎると樹が疲れ、実が小さくなるうえ、翌年の花芽がつきにくくなります。
一つの短い枝に複数の実が並んでいる場合は、形のよいものを一つ残して切り取ります。全体の数は、樹の大きさに見合う程度に控えめにします。小さな鉢の樹ほど、少なめに残すほうが翌年も安定して実がつきます。
剪定
冬の剪定(12〜2月)
葉が落ちて枝が見やすくなる冬に、形を整える剪定をします。このとき、花芽を切り落とさないことが大切です。
花芽は丸くふっくらした芽で、短い枝の先につきやすい傾向があります。葉芽は細くとがった芽です。
図:長く伸びた枝は切り戻し、短い枝の花芽は残します
長く伸びた枝は2〜3芽を残して切り戻し、内側に向かう枝や重なった枝は元から切ります。短い枝は、花芽を確かめて残します。
初夏の切り戻し(6月ごろ)
春に伸びた枝のうち、勢いよく長く伸びたものを軽く切り戻して、樹の形を保ちます。7月以降は翌年の花芽がつくられる時期なので、強い剪定は避けます。剪定の基本は剪定のガイドも参考にしてください。
肥料
花が終わってから梅雨の前までと、暑さがやわらぐ9月中旬〜10月に、ゆっくり効く固形の肥料を鉢の縁に置きます。実もの盆栽は花と実に体力を使うので、この時期の肥料を切らさないようにします。
真夏と冬は与えません。実が色づき始めたら、肥料はそれ以上足さずに様子を見ます。
植え替え
植え替えは、芽が動き出す前の2月下旬〜3月が適期です。小さな鉢は1〜2年に1回、中くらいの鉢は2〜3年に1回が目安です。古い土を3分の1ほど落とし、傷んだ根や長すぎる根を整理してから、水はけのよい土に植えます。
植え替えた年は、花や実を少なめに楽しむつもりでいると、樹が早く落ち着きます。手順は植え替えのガイドで詳しく説明しています。
一年の作業
図:姫リンゴの一年の作業(関東の平地の目安)
| 時期 | 樹の様子 | 主な作業 |
|---|---|---|
| 2〜3月 | 芽がふくらむ | 植え替え。冬の剪定の仕上げ |
| 4月 | 開花 | 人工授粉。花に水をかけない |
| 5〜6月 | 実がふくらむ | 摘果。肥料。伸びすぎた枝の切り戻し |
| 7〜8月 | 花芽がつくられる | 水切れと西日に注意。肥料は休む |
| 9〜11月 | 実が色づく | 肥料を再開し10月で終える。実を楽しむ |
| 12〜1月 | 落葉・休眠 | 花芽を確かめながら剪定 |
気をつけたい病害虫
- アブラムシ:春の新芽や若い葉の裏に集まります。数が少なければ手で取り、多ければ園芸用の殺虫剤を使います。
- 赤星病:春に葉に橙色の斑点が出る病気です。真柏などビャクシンの仲間が近くにあると出やすくなるため、同じ棚に並べないようにします。
- うどんこ病:葉に白い粉をまぶしたような跡が出ます。風通しの悪い場所で出やすく、病気の葉は取り除きます。
- 毛虫:初夏から秋に葉を食べる毛虫がつくことがあります。葉が急に減っていたら、枝の裏まで確かめます。
- カイガラムシ:枝に白や茶色の小さな殻のようなものがつきます。歯ブラシなどでこすり落とします。
真柏の側でも、春の雨のあとに枝に橙色のかたまりが出ることがあります。真柏を育てている場合の管理は、こちらで説明しています。
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