ヨーロッパでは、盆栽は日本から伝わった文化として広く知られ、各国に愛好会や専門の園芸店があります。ただし同じヨーロッパでも、冬に長く凍りつく地域もあれば、夏にほとんど雨が降らない地域もあり、日本と同じ育て方がそのまま通用するとは限りません。

そのためヨーロッパの愛好家は、自分の土地の気候に合わせて管理を変え、身近な在来の樹を盆栽に仕立てることにも力を入れてきました。ここでは、その工夫を地域ごとに見ていきます。

ヨーロッパに盆栽が広まった流れ

日本の盆栽がヨーロッパで紹介されるようになったのは、19世紀後半からです。パリなどで開かれた万国博覧会に日本の鉢植えの樹が出品され、日本の美術や工芸への関心とともに知られるようになりました。

広く一般に楽しまれるようになったのは、20世紀の後半からです。日本から盆栽や鉢、道具が輸入されるようになり、各国で愛好会が作られ、展示会や講習会が開かれるようになりました。今では、日本で修業した盆栽作家がヨーロッパで教えることも珍しくありません。

地域ごとの気候と管理の工夫

ヨーロッパの気候は、大まかに三つに分けて考えると分かりやすくなります。

地域 主な国の例 気候の特徴 管理の工夫
北部・中東部 北欧の国々、ドイツ、ポーランドなど 冬が長く、寒さが厳しい 冬は鉢ごと土に埋める、無加温の温室や車庫に入れるなどして根を凍結から守る
西部 イギリス、オランダ、ベルギー、フランス北部など 夏は涼しく、一年を通して雨が多い 水はけのよい用土を使い、長雨の時期は過湿に注意する
地中海沿岸 イタリア、スペイン、ギリシャ、フランス南部など 夏は高温で乾燥し、冬は穏やか 夏の水切れ対策。鉢をやや大きめにし、日よけを使う

ヨーロッパの気候と盆栽の管理の図。北部は冬の寒さで根が凍らないように守る。西部は雨が多いので水はけをよくする。地中海沿岸は夏に乾くので水切れを防ぐ
図:寒さ・雨・乾燥のどれが一番の課題かは、地域によって違います

寒い地域の冬越し

盆栽は鉢が小さいため、地面に植えた樹より根が凍りやすくなります。寒さの厳しい地域では、冬の間、鉢を庭の土や砂の中に埋めて、根のまわりの温度を安定させる方法がよく使われます。

ただし、暖房の効いた部屋に入れるわけではありません。落葉樹や松柏類は冬の寒さに当たることで春に芽吹くので、「凍らせないが、暖めすぎない」場所を選ぶのが基本です。

寒い地域での冬越しの例の図。鉢ごと庭の土に埋めて根の温度を保つ方法と、暖房のない小屋や温室に入れて、凍らせないが暖めすぎない方法
図:鉢を土に埋めるか、暖房のない室に入れて、根を凍結から守ります

雨の多い地域の水はけ

一年を通して雨の多い地域では、土がいつも湿っていることが根を傷める原因になります。日本から輸入される赤玉土のほかに、軽石や火山れき、焼成した粘土の粒などを混ぜて、水はけのよい用土にする工夫が広く行われています。

乾燥する地域の夏越し

地中海沿岸では、夏の乾燥と強い日差しが一番の課題です。鉢をやや深めにして水持ちをよくし、真夏は日よけの下で管理するなど、水切れを防ぐ工夫が中心になります。

在来の樹の使われ方

ヨーロッパの盆栽では、日本の樹種に加えて、その土地に自生する樹がよく使われます。気候に合っているので育てやすく、地域の風景を感じさせる盆栽になります。

樹 特徴
ヨーロッパアカマツ ヨーロッパ北部から広く分布する松。赤みを帯びた樹皮が特徴
モンタナマツ(ムゴマツ) アルプスなどの高い山に生える低い松。山で採られた古木が盆栽に仕立てられる
ヨーロッパカラマツ 秋に黄葉して葉を落とすカラマツ。寄せ植えにも使われる
セイヨウサンザシ 春に白い花、秋に赤い実をつける低木
コブカエデ ヨーロッパ在来のカエデ。小さな葉で秋に黄葉する
ヨーロッパブナ・シデ類 雑木盆栽として、冬の細かな枝ぶりが楽しまれる
オリーブ 地中海沿岸の代表的な樹。太い幹と銀色がかった葉が特徴

ニレの仲間も、ヨーロッパでよく使われる樹です。写真は、ヨーロッパから西アジアにかけて分布するニレの一種を仕立てた盆栽です。

ヨーロッパ原産のニレの一種を仕立てた盆栽。大小2本の幹が浅い鉢に植えられている
写真:Drew Avery / CC BY 2.0

オリーブの盆栽の育て方は、こちらで説明しています。

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愛好会と展示の楽しみ方

ヨーロッパの多くの国には盆栽の愛好会があり、定期的な集まりで樹の手入れを教え合ったり、展示会を開いたりしています。国をまたいで多くの作品が集まる展示会もあり、各国の愛好家が自分の土地の樹を持ち寄ります。

展示では、日本の樹種と並んで、在来の松や雑木の作品が多く見られるのが特徴です。同じ松でも、日本の黒松や五葉松とは葉の長さや樹皮の色が違い、その土地の山の風景を感じさせます。旅行先で盆栽の展示を見かけたら、どの樹がその土地のものかを探してみると楽しめます。

山から樹を採るときの決まり

ヨーロッパでは、山や野に生えている古い樹を掘り上げて盆栽に仕立てることも盛んです。こうした樹は、厳しい自然の中で長い年月をかけて育った独特の姿をしています。

ただし、樹を採るには土地の所有者の許可が必要で、国立公園や自然保護区では採取が禁じられています。保護の対象になっている種類もあります。愛好会などが土地の所有者や自治体と相談し、許可を得て採取する形がとられています。

注意

日本からヨーロッパへ、またヨーロッパから日本へ植物を持ち込むときは、植物検疫の規制があります。樹の種類によっては、持ち込みに厳しい条件がついていたり、輸入できなかったりします。手続きの考え方は、こちらで説明しています。

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日本で育てるときに役立つ考え方

ヨーロッパの工夫は、日本で盆栽を育てるときにも参考になります。

  1. 一番の課題を見極める:住んでいる場所で困るのが冬の寒さなのか、梅雨の過湿なのか、夏の乾燥と暑さなのかを考え、そこから管理を組み立てます。
  2. 用土を気候に合わせる:雨の多い時期に根腐れが続くなら水はけのよい土に、夏の水切れが多いなら水持ちのよい土に、配合を少し変えてみます。
  3. 身近な樹に目を向ける:その土地の気候に合った樹は、育てやすく、長く付き合える盆栽になります。

寒い地域での冬越しの方法は、盆栽の冬越し失敗対策で詳しく説明しています。世界各地の盆栽の広がりは、こちらで紹介しています。

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