剪定は、伸びた枝をただ短くする作業ではありません。どの枝を残し、どの芽を伸ばすかを決めて、数年先の樹の姿を作っていく作業です。

判断するのは、どの枝を切るか、いつ切るか、どこで切るかの3つです。この記事では、ハサミの持ち方などの基本は済んだ人に向けて、忌み枝の見分け方、芽を見た切り方、樹のグループごとの時期を説明します。剪定・芽摘み・針金かけの基本は、こちらで説明しています。

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剪定の目的

  • 樹形を保つ:伸びた枝を切り戻し、輪郭を整える。
  • 枝を細かくする:切ったところから新しい枝を分かれさせ、枝先を密にする。
  • 光と風を通す:込み合った枝を間引き、内側の枝や芽が弱るのを防ぐ。
  • 力の配分を整える:樹は上や外側の枝ほど強く伸びます。強い枝を抑えて、弱い枝に力を回します。

切る候補になる枝(忌み枝)

忌み枝の種類。立ち枝、閂枝、下がり枝、逆さ枝、交差枝、徒長枝は切る候補になる
図:樹形を乱しやすく、切る候補になる枝

枝の名前 どんな枝か 扱いの目安
立ち枝 横に伸びる枝から真上に立つ枝 元から切る。短く残して横向きの芽を伸ばすことも
下がり枝 真下に向かって伸びる枝 元から切る
逆さ枝 幹の方へ戻るように伸びる枝 元から切る
交差枝 ほかの枝と交差する枝 どちらか一方を切る
閂枝 幹の同じ高さから左右に出る2本の枝 どちらか一方を残す
車枝 幹の同じ所から3本以上出る枝 1〜2本に減らす
徒長枝 ほかより勢いよく長く伸びた枝 根元の芽を残して短く切る

すべてを一度に切る必要はありません。一度にたくさん切ると樹が弱ることがあるので、樹の勢いを見ながら数年かけて整えていきます。

どこで切るか

切る位置の比較。芽の少し上で切るのがよく、残しすぎると先が枯れ込み、芽のすぐ際で切ると芽が傷む
図:芽の少し上で切ります

  1. 伸ばしたい方向の芽を選ぶ:切ったあとは、残した一番先の芽が伸びます。枝を外へ広げたいなら外向きの芽、内へ入れたいなら内向きの芽の上で切ります。
  2. 芽の少し上で切る:芽から離れすぎると残った部分が枯れ込み、近すぎると芽が乾いて傷みます。
  3. 元から切る枝は、付け根に沿って切る:中途半端に残すと、そこから不要な芽が出たり、枯れ込んだりします。
  4. 太い枝は段階的に:太い枝はいったん少し長めに切り、残りを又枝切りで付け根に沿って切ります。切り口が平らかわずかにくぼむように仕上げると、巻き込みがきれいになります。

使い込まれた古い盆栽の道具。木の柄のついた刃物
写真:ShebleyCL / CC BY 2.0

切れ味の悪いハサミは切り口をつぶし、枯れ込みの原因になります。使った後は樹液を拭き取り、刃を乾かしておきます。

樹のグループごとの時期

樹のグループごとの剪定と芽の作業の時期。黒松は1〜2月に剪定、6月中旬から7月上旬に芽の作業、10月下旬から12月上旬に古葉取り。五葉松は10〜2月の休眠期に剪定、4月下旬から5月に芽の作業、秋に古葉取り。もみじと欅は冬に剪定、4〜5月に芽の作業、6月に軽い整理。梅は花後の3月に剪定、冬に軽い整理。さつきは花後の6月に剪定
図:剪定と芽の作業の時期(関東の平地の目安)

松柏類(黒松・五葉松・真柏など)

枝を切る剪定は、樹液の動きが少ない冬が基本です。形づくりの中心は芽の作業で、黒松は初夏(6月中旬〜7月上旬)に新芽を元から切る「芽切り」をして、短くそろった二番芽を出させます。五葉松は芽切りをせず、春に伸びる新芽(みどり)を摘んで長さを抑えます。秋から初冬には、込み合った古い葉を取り除いて光を入れます。

真柏は、伸びた新芽を指先でつまむか、ハサミで枝ごと間引きます。葉先をハサミで切りそろえると、切り口が茶色くなるので避けます。

雑木類(もみじ・欅など)

葉が落ちて枝の形がよく見える冬に、基本の剪定をします。春に新芽が伸びたら芽摘みで長さを抑え、初夏に伸びすぎた枝を軽く切り戻します。もみじの年間の作業は、もみじの盆栽の育て方で詳しく説明しています。

花もの・実もの(梅・さつきなど)

花芽をつける時期を知ることが大切です。梅は花が終わったらすぐに枝を切り戻し、夏までに次の花芽ができます。さつきも花後すぐに剪定します。夏以降に切ると、翌年の花芽を落としてしまいます。

注意

花ものを冬に「形を整えよう」と切りすぎると、花芽ごと切ってしまうことがあります。冬に切るのは、枯れ枝や明らかな忌み枝にとどめます。

道具の使い分け

道具 使うところ
剪定ばさみ 細い枝から中くらいの枝。ふだんの剪定の中心
芽切りばさみ 刃先が細く、芽や葉、込み合った所の細い枝
又枝切り 太い枝を付け根に沿って切る。切り口がくぼむ
こぶ切り 切り口の出っ張りや、こぶを削る

太い枝を剪定ばさみで無理に切ると、刃が傷み、切り口もつぶれます。枝の太さに合った道具を使います。

剪定の前に見ること

ハサミを入れる前に、次の順で樹を見ます。

  1. 正面から全体を見る:少し離れて、樹冠の輪郭からはみ出している枝、込み合っている所を見つけます。
  2. 樹の勢いを見る:芽の数、葉の色、去年伸びた枝の長さ。弱っている樹は、剪定を控えめにします。
  3. 枝ごとに残す芽を決める:どの芽を伸ばせば、思い描く形に近づくかを考えます。
  4. 切る枝に印をつける:迷う枝は、ひもを結ぶなどして印をつけ、もう一度全体を見てから切ります。

よくある失敗

  • 一度に切りすぎる:樹が弱り、翌年の芽吹きが少なくなります。一年に切るのは、全体の枝の一部にとどめます。
  • 時期を外す:花ものの花芽を落とす、真夏に太い枝を切って弱らせる、といった失敗が多くあります。
  • 上ばかり残す:上の枝は強く伸びるので、上を残して下を切ると、下枝が弱って枯れやすくなります。
  • 切り口が目立つ:正面から見える位置に太い切り口を作らないよう、切る位置を考えます。

切った後の手当て

  • 太い切り口には癒合剤を塗る:乾燥と雑菌の侵入を防ぎ、巻き込みを助けます。細い枝なら不要です。
  • 強い剪定の後は肥料を控える:樹が回復するまで、弱った状態で肥料を与えすぎないようにします。
  • 置き場所はいつも通り:日当たりと風通しのよい場所で、芽吹きを待ちます。

ポイント

迷った枝は、その年は残しておきます。切った枝は元に戻せませんが、残した枝は来年でも切れます。

剪定に使う道具の選び方は、盆栽道具の選び方で紹介しています。