盆栽を海外の家族や知人に送りたい、旅行先で見つけた樹を持ち帰りたい。こうした場面では、ふつうの荷物とは別に「植物検疫」という手続きが必要です。植物には目に見えない虫や病気、土の中の生き物がついていることがあり、国をまたいで広がらないよう、どの国も持ち込みに条件を設けています。

手続きそのものは一度流れを知れば難しくありませんが、国や樹種によっては持ち込み自体が認められていないこともあります。ここでは、個人で送る・持ち込む場合を中心に、最初に何を調べ、どんな準備をすればよいかを順に説明します。

まず知っておきたいこと:決めるのは「相手の国」

輸出の可否や条件を決めるのは、受け取る側の国です。日本の植物防疫所は、相手国が求める条件を満たしているかを検査し、合格すれば「植物検疫証明書」を出します。つまり、日本側で検査を受けても、相手国の条件に合っていなければ受け取ってもらえません。

条件は国ごとに大きく異なり、よくあるのは次のようなものです。

  • 土がついていないこと:多くの国が、土のついた植物の持ち込みを認めていません。盆栽は鉢と土ごと送れないことが多いと考えておきます。
  • 樹種の制限:特定の樹種や、その仲間の植物を受け入れていない国があります。松などの針葉樹は、条件が特に厳しい国が少なくありません。
  • 事前の許可:受け取る側が、自国の役所から輸入の許可を取っておく必要がある国もあります。
  • 栽培地の条件:一定期間、決められた条件で育てたことの証明を求める国もあります。

相手国の条件は変わることがあるので、送る時期が近づいたらもう一度確認します。

送るまでの流れ

盆栽を海外へ送るときの流れ。相手国の条件を調べ、植物防疫所に相談し、土を落として根を洗い、輸出検査を受け、証明書を添えて梱包して送り、相手国で輸入検査を受ける
図:相手国の条件を調べるところから、受け取りまでの流れ

  1. 相手国の条件を調べる:受け取る人に、その国の植物検疫の窓口で条件を確かめてもらうのが確実です。日本の植物防疫所のホームページにも、国ごとの条件がまとめられています。
  2. 植物防疫所に相談する:送る樹の種類と数、送り先の国を伝えて、検査が受けられるか、何が必要かを確認します。検査の申し込みは、日程に余裕を持って行います。
  3. 送るための手当てをする:土を落とし、虫や病気がついていないかを確かめます(次の章で説明します)。
  4. 輸出検査を受ける:植物防疫所で現物を見てもらいます。合格すると植物検疫証明書が出ます。
  5. 梱包して送る:証明書を添えて送ります。植物を扱える配送方法かどうかも、事前に配送業者に確かめておきます。
  6. 相手国で輸入検査を受ける:到着後に相手国でも検査があり、条件に合えば受け取れます。

植物防疫所の窓口や手続きの案内は、農林水産省の植物防疫所のページで確認できます。

送るための手当て

検査で止まりやすい状態と準備のポイントの比較。根に土が残っている、葉や幹に虫や卵がつく、苔や雑草がついたまま、書類と中身が合わないと止まりやすい。根を水で洗い土を落とす、葉裏と幹の割れ目を見る、表面の苔や雑草を取る、樹種名は学名でそろえる
図:検査の前に確かめたいことと、準備のポイント

土を落とす作業は、樹にとって植え替えと同じくらいの負担になります。根を洗うのは、植え替えに向く時期(多くの樹種で春先)に合わせると、送ったあとの回復が早くなります。

  1. 鉢から抜き、竹箸や水流で根の間の土をていねいに落とします。細かい根を引きちぎらないよう、水につけながらほぐすと作業しやすくなります。
  2. 表面の苔、雑草、落ち葉を取り除きます。苔も植物なので、ついたままだと検査で問題になることがあります。
  3. 葉の裏、芽のすき間、幹の割れ目に虫や卵がないかを見ます。カイガラムシは歯ブラシでこすり落とします。
  4. 根が乾かないよう、相手国の条件で認められている資材(湿らせた水苔など)で包みます。使える資材も国によって異なるので、事前の確認が必要です。

土を洗い落とした樹の根を手で持っている様子
写真:Aleks J Clark / CC BY 2.0

根の扱い方は、植え替えの手順とほぼ同じです。根のほぐし方と切り方は、こちらで説明しています。

あわせて読みたい盆栽の植え替え|樹種別の時期・用土の配合と、根の切り方の手順記事を読む ›

注意

鉢も検査の対象になることがあります。土が残った鉢を一緒に送ると、それだけで受け取れないことがあるので、鉢は別に洗って送るか、現地で用意してもらいます。

必要になることが多いもの

項目 内容 確かめる先
植物検疫証明書 日本の植物防疫所が検査に合格した植物に出す 植物防疫所
輸入の許可 受け取る側が自国で取る。必要な国と不要な国がある 受け取る国の検疫の窓口
樹種名(学名) 書類と現物の名前をそろえる。和名だけでは伝わらない 図鑑や購入先
配送方法 植物を送れるか、届くまでの日数 配送業者
保護の規制 一部の樹種は、国際的な取引の規制の対象になる 経済産業省・植物防疫所

樹種名は、学名で書けるようにしておくと手続きがスムーズです。英語での盆栽の呼び方や樹種名は、盆栽の英語表現ガイドにまとめています。

送る時期と、届いてからの手当て

根を洗った樹は、鉢植えの樹よりずっと乾燥と温度の変化に弱くなっています。送る時期は、植え替えに向く春先か、暑さが落ち着いた秋がよく、真夏と真冬は避けるのが無難です。

  • 届くまでの日数を短くする:検査の日から発送までの間をあけず、届くまでの日数が短い送り方を選びます。
  • 受け取る人に段取りを伝える:届いたらすぐ開けて、用意した鉢と用土に植え付けてもらうよう、事前に伝えておきます。
  • 植え付け後は日陰で休ませる:植え付けたあとは、植え替え直後と同じく、2〜3週間は風の当たらない明るい日陰で管理します。

受け取る側の気候が日本と大きく違う場合、樹種によっては現地の夏や冬を越せないこともあります。送る前に、その樹が現地の気候で育てられるかも確かめておくと安心です。

海外から日本へ持ち込むとき

旅行先で買った植物を日本に持ち込む場合も、輸入検査が必要です。空港や港の植物検疫カウンターで検査を受け、合格すれば持ち込めます。

  • 土は持ち込めない:日本は土の持ち込みを認めていないので、土のついた鉢植えのままでは持ち帰れません。
  • 輸出国の証明書が必要:多くの場合、輸出する国が出した植物検疫証明書が必要です。お店で買うときに、証明書を用意できるか確かめます。
  • 持ち込みが禁止されている植物がある:地域と植物の組み合わせによっては、証明書があっても持ち込めません。

旅行の前に、植物防疫所のホームページで持ち込める植物かどうかを確かめておくと、空港で手放すことにならずに済みます。

ポイント

初めて送るときは、海外への発送を手がけたことのある盆栽園に相談するのも一つの方法です。樹の手当てや梱包に慣れているので、どの時期に、どの状態で送るのがよいかを具体的に聞けます。

贈り物として送る場合

海外の方への贈り物として盆栽を考えている場合、樹そのものを送るのが難しい国も少なくありません。その場合は、現地で手に入る樹種で楽しめる道具や鉢を贈る、来日の際に一緒に盆栽園を訪ねるといった方法もあります。贈るときの考え方は、こちらで説明しています。

あわせて読みたい海外の人に盆栽を贈るとき|検疫の決まり、贈り方の選び方と添えたい説明記事を読む ›